新卒無駄遣い日記

新卒を半年で無駄にした人間を憐れんで。

十二月、雑記

 

総括をすると今年が終わった気になってしまう。

何もできなかった今年をまだ終わらせたくない。

という訳で五ヶ月ぶりの雑記を。

 

 

・12/22

応募しようとしていた映像翻訳の求人が予定より早く募集を停止した。
時間をかけて履歴書を書いていたのが仇となった。

急いては事を仕損じるとも言うし、善は急げとも言う。
急がば回れとも言うし思い立ったが吉日とも言う。
こうなる運命だったのだと、思いの外さっぱり諦められてはいるが、はてさて、また先が見えなくなったぞぉ。

 

 

・12/23

休日だったが人が足らんと言う。

仕方が無いので出勤した。

珍しく葛飾区と北区辺りの配送だった。
小さい頃は北区で暮らしていたため、下町らしい商店街や路面電車には懐かしい気分にさせられた。

商店街での作業中、売る気のないレイアウトで店頭に置かれていたパイナップルの缶詰が(なんでだか)どうしても気になったので買うことにした。

店主と思われるやる気のないおっちゃんがびっくりしていた。商店やってんのに物買われてびっくりするなよ。

お金を出すとおっちゃんが「ありがとうね!」とびっくりするほど気持ち良くお礼を言ってくれた。缶詰一個では足りないなぁと思い、思わずレジ横のすあまも買ってしまった。

 

 

・といった感じで友人に日記を送り付けている。三日坊主になるまいとしているが師も走る月なのでどうも忙しく手が回らない。もしやこの言い訳をしている状態こそが三日坊主ということなのか。

 

 

・高校からの友人達と久しぶりに顔を合わせた。

なんの目的もなしに集まって駄弁ってのつもりだったのが友人達は誕生日の近い俺を祝う準備をしてくれていて、ケーキとプレゼントまで貰ってしまった。この時期に集まると毎回なんかしらしてくれるので申し訳なさとありがたさでいっぱいです。サプライズしてくれようとしていたのにタイミング悪く廊下に出てしまったのは純粋に申し訳ない。

高校生の時に貰ったドクロの置物は部屋の隅で今も俺を見つめている。歳をとったなぁと思いながら、貰ったビール券を俺は見つめている。

 

 


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・久しぶりに馬に乗った。上の画像は、甘えて顔を擦りつけているのかと思ったら顔が痒いだけだったと判明した瞬間の写真だ。馬の感情とは関係のないフレーメン反応という現象なのだが嘲笑っているようにしか見えない。というかこの馬、トレッキング中に草を食べ出すわ、立ったまま寝るわで完全に俺を見下していた。馬がアホで可愛いという話をしたら、「さすが馬鹿の一角を担っているだけある」と言ってきた佐々木はやはり天才。

ちなみにこのとき俺が来ている服は仕事用の作業着。馬面を擦り付けられてだいぶ馬臭いが翌日そのまま出勤した。

 

 

馬は良い。すごく好きだ。

あの物悲しそうな目、しなやかな筋肉、長い足、ぶよぶよの顎、隙あらば草を食む所、人語や心情を理解する賢さ、そして人を乗せる事を全く何とも思っていないような姿、その全てが好きだ。

初めて馬に乗ったのは高校三年、ニュージーランドにいた頃だ。だだっ広い庭(獨協大学の半分くらいはあった)で暇つぶしにひたすら乗っていた。俺の中でニュージーランドでの生活の象徴が馬である。ニュージーランドでの生活は俺の人生観に大きな影響を与えた。留学で人生が変わったなんて陳腐な表現だが過言ではない。これだけで一つ記事が書けそうなのでまたの機会にするが、俺はあれ以来変な人になった。あれ以前も変だったろと突っ込むのはやめろ。

 

 

・願いと呪いは紙一重だなぁとこの時期は思う。相手を想い五寸釘を打つ行為も願いの範疇だし当たり前なのだがそういう話ではない。。

クリスマス、誕生日、新年と、何かと願い事だとか抱負、祈りなどを意識することが多い。

強すぎる想いはそれ自体が他者向けか自分向けなのかは問わず対象を苦しめる。簡単に言えばプレッシャーに圧殺されうるということだ。何事にも何人にも大して期待も願いも込めない方が結果的に生きやすいのだと思う。

 

 

・プレゼントで貰ったジェラートピケのパジャマの肌触りがとても良いので寝坊してしまう。

 

 

・人間は機械に頼りすぎてどんどん弱く、そして愚かになっていく。加湿器を一日焚き忘れただけでやられた俺の喉がそれを証明した。

 

 

・はやくお雑煮が食べたい。

 

 

・お年玉をあげる歳になったことは認めない。

秋空き

 

秋はちょうどいい時間に夕焼けが見られて良い季節だと毎年思う。

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半袖はやや寒いくらいの朝、外を歩き鼻から空気を吸い込むと、つい先日までの暑さが嘘のような優しい冷たさを感じ、冷たくなったなぁ、秋だなぁと当たり前の感想を抱きながら満足する。

 

鼻腔の浅い所を擽る金木犀の匂いに気がつくと、この匂いを胸いっぱいに吸い込みたくなる。が、花に近づき意識的に嗅ごうとしても期待していたほど香らない。

 

意識の外から香るその匂い。

それは意識してしまった途端に逃げられてしまう。求めるものこそ逃げゆくものなのだ。

 

尾崎放哉の

「木犀に 人を思ひて 徘徊す」

という句を思い出す。

 

何となくぼんやりと、言わんとすることがわかる気がする。

 

そうこうしているうちにさっさと散ってゆく金木犀は「また来年ね」と言っているようである。

 

そういうわけで、金木犀の匂いを嗅ぐといつも勿体ないというか、もどかしいというか、そんな気持ちになる。

 

 

 

 

去年の今頃の金木犀は雨に散り、ほとんど香る暇がなかったと記憶している。

 

そして去年の今頃の自分は無職になったと記憶している。

 

1年は早い。

早すぎて何もできなかった。

 

いやほんとまじで何もできなかった……

 

 

ただただ、配送しながら待ち続けているだけの1年間であった。何も生み出せなかった。

 

2月から渡英の予定が6月、10月とどんどん延期になり結局キャンセル。 その間に運んだ冷蔵庫の数は約1000個。

 

自分の希望的観測が招いた結果ではあるが、約9ヶ月の無駄遣いは新卒の無駄遣いよりくるものがある。腰にもくるものがある。

 

目的があったからそれに縋り、踏ん張れてきた。

目的が無くなれば足元にも心にもぽっかり穴が空き、さすがに凹む。

 

 

もう運送業でもいいかもしれない。

休みも給料も他所と比べれば悪いかも知れないが、精神衛生という点で見れば抜群に良い。

トラックの運転は楽しい。

アホな客みてニヤニヤするのも楽しい。

同僚上司先輩には恵まれているし、毎日部活の延長のような生活をしながら金をもらい、快適ではないか。

うん、全然悪くない。職場も近いしもういいや。

 

 

 

 

 

 

 

なんて言うとでも思ったか!マヌケがァ~~~!


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生憎、ここで腐るようなクソザコメンタルはしていないのである。

 

配送業もいいがこのジョルノ・ジョバァーナには夢があるのだ。


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このまま待っていたところで渡英イベントが発生しないことが確定したというのは大きい。

 

イベントが来るかもしれないと思いながらダラダラ待機していたのがいけなかった。これこそが生産性のない生活の原因だった。

 

あと50回転回せば多分ペカると思いながらダラダラ打ち続けるジャグラーのようにいけなかった。

 

とにかく、待つことには飽き飽きした。

モラトリアム延長戦も最高の職場のおかげで1年間満喫した。

今年の残り約3ヶ月間で未来に繋がる能動的な事をしたい。

 

就職はしねぇよ。絶対にだ。

 

 

予定の空きは充分だ……

第3Rといこうじゃねぇか……モラトリアム!!

 

 

 

 

七月、雑記

 

文の推敲はなかなかに体力を使う。

わざわざ記事にする程でもないことを徒然と書く。

 

 

・バイト

 給料が10%あがった。ほぼ社員と同じことをしている。残業は約60h。全く苦にならない。思うに、ノリが高校の部活と殆ど変わらないからだろう。

 大卒が正規ルート扱いされている昨今だがルートから外れた者たちの方が幸せそうに見える。みんなもっと単純でいいんじゃないかとつくづく思う。

 

 

・クソ客

 社員と同じ仕事をするようになり以前よりも接客が増えた。それにより今まで気づかなかったタイプのクソ客を認知した。よくこんなのを捌けるなぁあの人たち、と感心した。みんなはプロが入らないって言ったら素直に諦めてね。というか、家具家電買うなら絶対に搬入経路の採寸してね。

 

 

 

・別府?

 先日、市営のプレハブみたいな住宅に冷蔵庫の納品に行った。GANTZのかっぺ星人みたいな男が芋と酒の空き瓶だらけの部屋から出てきた。

 

ぼく「先に置き場所確認させてもらいますね。」 

かっぺ「好きにせえや。」

 

立ちはだかるかっぺ。

 

ぼく「……入っていいですか?」

かっ「好きにせえ言うとるがな。」

ぼく「……失礼しまーす。」

「とりあえず芋と酒瓶どけてもらわないと搬入できないですね。」

っぺ「そんなもんお前がどかせや。」

ぼく「お客さんちの物触れないんです、冷蔵庫の中身も出してくださいね。」

 

キレるかっぺ。ネタになるなとウキウキのぼく。

そこで思い出した。明らかに金を持ってない風体で、商品が代引きの場合はで先に金を預かるように上から言われているのだった。

 

ぼく「代引きが4万、リサイクル料金が別に8千かかります。お先に頂きますね。」

かぺ「ほなら下ろしてくるわ、30分くらい待っとけ。」 

 

待てないし態度も悪いのでせめて煽ってみようと思ってしまった。

 

ぼく「片付け含めたら1時間くらいかかりますよね、待てません」

かぺ「ほならべっぷにせえ!」

ぼく「……はい?」

かぺ「べっぷ!!!」

ぼく「……べっぷ……?」

かぺ「べっぷにせえや!!!!」

ぼく「…………温泉…?」

かぺ「べ!!っぷ!!!」

右胸をぶん殴られた。

 

ぼく「あ、月賦ね!!!無理です!」

かぺ「じゃあ持って帰れ!!」

ぼく「わかりました~失礼します〜」

 

プレハブ前で荷主に撤退許可を乞う電話をしている間、窓からずっと睨んでいて少し命の危険を感じた。次に殴られるような事があったら被害届を出してみたいと思う。バイト代より稼げるかもしれん。

 

 

・後輩

PCを買いに行った際、高校から仲良くしている後輩にお供してもらった。NZへの交換留学の際に知り合った。かなり賢いのにどこか抜けていてかわいい奴。賢いので予備校も行かず国公立に受かった。抜けているので留年した。シルエットも雰囲気も自分と似ているらしい。妙な程に気が合う(同じタイミングで同じことを考えていることがよくある)のでPC選びでもクリティカルな意見をくれた。安くは無い買い物。そういう時に意見を求めたい人が居ることを嬉しく思った。

 

 

・ドールケーキ

大学の友人の誕生日をゼミ同期で祝った。一万もするドールケーキをプレゼントした。バービー人形がケーキを纏っている。というかケーキにバービーがぶっ刺さっている。準備している側が一番楽しんでいたと思う。

 

 

山頭火

幼い頃から通っていた静岡の海岸や食事処に行った。東京から数時間運転してやっと海が見えた時に「山は街は梅雨、晴るる海のささ濁り」という山頭火の句を思い出し、何気なく調べてみたら近場に句碑があるという。何ヶ所か巡った。何か縁があるのではと思えた。

 


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・濡れる

屋外作業が多いのでとにかく濡れる。

天気が悪けりゃ雨で、天気が良けりゃ汗で。

雨か汗か。Ame or Ase.

 

 

・花々 

紫陽花が散った。結局写真を撮らなかったな。

百日紅が咲き始めた。近所に百日紅だけ咲いている土地を見つけた。もう少ししたらかなり綺麗だろう。楽しみだ。 

白いサルスベリはなんて書くのだろうとふと思い、調べてみると百日白と書くらしい。予想通り。

 

 

 

また月末に書くかもしれない。

普通の記事になるかもしれない。

次のトピックは母か弟になるかもしれない。

他にリクエストがあれば書くかもしれない。

夜霞と街灯と紫陽花

 

俳句が好きだ。

最初は知識人ぶってイキっていただけだったがいつの間にか本当に好きになっていた。

未だに大学の友人とおふざけでエグい下ネタの句を詠み合ったりしている。お前の事だよ佐々木。

 

いつの間にかではないな。

配送業についてからだ。

 

四季折々の風景眺め放題の仕事故、共感できる一句に出会いやすいからだろうと思う。

 

特に花についての句が好きだ。お気に入りを何句か挙げたい。

 

影は滝 空は花なり 糸桜

手折らるる 人に薫るや 梅の花

朝顔に つるべとられて もらい水

散れば咲け 散れば咲きして 百日紅  加賀千代女

 

水草の 花の白さよ 宵の雨  正岡子規

 

春の夜は 桜に明けて しまひけり  松尾芭蕉

 

 

百日紅(さるすべりって読むよ、読めた?)と水草の句は一押しのバンド、ヨルシカの曲にも引用されている。

 


ヨルシカ - 雨とカプチーノ(Official Video)

 

花々を見てふと頭にフレーズが浮かぶ感覚は気持ちがいいものだよ。

 

 

本当はもっと早く書こうと思っていた題材だった。

春、秩父へ配送に行ったとき、雨上がりの遠くの山から湯気が立っていた。

なんでもない景色ではあるのだが

「春の山のうしろから烟が出だした」

という尾崎放哉の句を思い出した。それ以来この句はお気に入りであり、記事を春真っ盛りに間に合わせたかったのだが、留学の度重なる延期でメンタルがやられっぱなしだったため筆が進まなかった(ブログで筆という表現をしていいのだろうか)。そしてこの句もヨルシカの最新曲に引用されている。

 


ヨルシカ - 思想犯(OFFICIAL VIDEO)

 

なんだか横取りされたようで悔しいような、同じ句を知っていて嬉しいような気持ちであった。

 

 

ようやく書く気になったのは紫陽花が綺麗だったから。花弁が四枚だから別名は四片。ヨヒラと読む。

 

紫陽花といえば正岡子規

「紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘」

という一句だろう。

日々変わる紫陽花の花弁の色を「誠・嘘」と表現したことには感服する。

ブログ書こう、この本読もう、勉強しよう、部屋掃除しよう、ちゃんと起きよう、スロット辞めよう……明日を迎える度に嘘になっていく今日の誠をいくつも重ねて、気づけば散りつつある紫陽花。流石にもう腐っている場合じゃないと勝手に紫陽花で、この一句で奮いたった。というより焦った。

 

 

さて、先に挙げた尾崎放哉だが、

「咳をしてもひとり」が有名。

傲慢でアル中で人を嫌っていた男が晩年に病床で詠んだ句には寂しさと、人に理解されなかったことへの恨みを感じる。

 

同じく自由律俳句の俳人種田山頭火。放哉と同じく家柄も学歴もあったにもかかわらず世捨て人のような生活をしていた。

そんな彼が晩年に作り上げた自選句集には、放哉の句に寄り添ってと前置きされたこんな句がある。

 

「鴉啼いてわたしもひとり」

 

ただの一文字にこれほどまでに想いを、意味を感じたことはない。

最近知ったことの受け売りのようなものだがとても好きな話なので書きたかった。

 

 

一時狂ったように聴いていた曲がある。

 

自分が楽に生きたいから今日も逃げ続けたんだろ

並にできないから 人になれないから

それが言い訳だろうとほっといてくれよ

 

という詩がかつてメンヘラループ地獄にいた自分に刺さり、一人で凹んで気持ちよくなったりしていた。書いててキツい。書いてる時に当時の戦友からLINEが来て尚キツかった。お前の事だよ森山。当時の話はいつか書く。

 

この歌には先に挙げた「紫陽花・咳・鴉」の三句が引用されていることを思い出した。

タイトルは「ヨヒラ」。

仕事終わりの帰路で久しぶりに聴いた。自分の変化もあるだろうが、たった一文字に込められた意味を知るだけでずいぶん違う意味の曲に感じた。

夜霞にぼやけた街灯がぼんやりと紫陽花を照らしていた。滅多に味わうことのないだろう贅沢な体験をした夜だった。

 

 


ヨヒラ / 初音ミク

 

この曲の作詞作曲者はn-buna、ヨルシカの作詞作曲者その人である。

 

結局何が言いたいかって?古参アピールと布教だよ。

 


夜明けと蛍 / ナブナ

 

 

追記

この季節はこういう空が見られるから良い。明日も空が綺麗だといいなと思うだけ。

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やさぐれ無職と新型コロナ

桜も雪に散り葉桜が目立つ今日この頃。

 

4月から社会人になった人もいるなか、自分は4月からも無職、最近は専らドラム式洗濯機を運んでいる。新生活への期待と不安など微塵もない。


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しかし週6で働き月30万前後稼いでいるので、もはや無職ではない気もしている。もはやアイデンティティと化した『無職』という称号すらも薄れていく。俺は一体なんなんだ。

 

 

 

さて、自分は仕事が嫌だったからという理由だけで無職道を歩むことになったのでは無い。

 

1つ目の目的(目的という言葉は不適な気もするが)は犬の死の看取り。

自分が飼いたいと言ったことから始まり、人生のほとんどを彼女と過ごした訳だから最後は一緒にいたかった。仕事は何回でも変えられるが彼女の変わりはいない。前職場には犬への愛情など理解できないだろう鉄仮面しかいなかったので看取ることは難しいと思った。これは誰にも言っていないが最大の目的であった。

 

 

2つ目の目的は5月の渡英。

英語講師として働く中で、人に教える前に自分がもっと学びたくなった。ていうか、教わる気がない糞ガキ共に心血注いでやるのが馬鹿らしくなり、本当に学びたい自分を救ってやりたくなった。なにより、やはり映画の翻訳をやりたいという思いが奥底にこびりついて拭いきれなかったのだ。受験生だった彼らには申し訳ない気もしなくはないが、やはり人間エゴを押し通してなんぼだと思うので恨みっこなしでお願いします。

 

 

1つめは達成した。2つめはコロナで延期。

というか、多分中止になる。仕方ないことであるが、動揺した。このタイミングでは就職に切替えることは難しい。なにより渡英は諦められない。絶対行きたい、が、行くにしてもいつになるか分からない。つまり無職延長コースなのだ。

 

自分は実家暮らしで親の脛がふにゃふにゃになるまでしゃぶり続けているが、親は何も言わない。

それが逆にきつい。

そして彼女は『世間的に言ったらクズ寄りだよね……私はそう思わないけど……!』と言う。

いやフォローになってないし思ってるやんそれ。これは普通にきつい。

 

ずっと楽しみにしていたラストオブアスの続編も延期になった。まぁパンデミックで人類滅亡寸前の話だから分からなくはないが。

 

要は希望が尽く貪られたわけだ。

自分がいくら落ち着いて考えてみても、コロナくんが落ち着いてくれない限りは身動きがとれないと分かるだけ。何かしなくてはと焦るも無駄、何もできない……

せめて金は稼がなくては、何かしなくてはと始めたすき家の夜勤も一日目で辞めた。いくらなんでも働きすぎだ。血迷いすぎだ。それにすき家夜勤なんて無職感が強すぎる。

 

やはりトレンドの自粛をしながらNetflixに潜るしかないのか。

 

 

 

 

いや……

 

あるではないか。

 

何を弱気になっている。仕事を辞めた時のあのイキりっぷりはどうした!!

 

 

今の俺は背骨だけじゃなく心も折れている!(まじで折れてる)

頑張れ岩村頑張れ!俺は今までよくやってきた!俺はできる奴だ!そして今日も!これからも!折れていても!俺が挫けることは絶対にない!


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オロパタジンでぼんやりする意識の中で輝く1つの光。 進め、行け、チャンスだと鼓舞する豆電球のように暖かい光……

 

いくぞ、無職の呼吸、壱の型……

 

 

 


GoGo!!ランプ!!!!


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往ぬ



15年前、まだ小学二年生で恐竜学者になりたいとほざいていた頃、彼女が家に来た。

 

この歳のガキにありがちな世話するから犬飼いたいコールに親父が応えてペットショップでチワックスを買ってくれることになった。

 

次の日に親父が車を出して向かった先は謎の集合団地。老夫婦がニコニコしながら子犬……と言うには少しデカめな牛柄の犬を差し出してきた。



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どうやら親父が街中で飼い主募集の広告をみて即決してきたらしい。息子の意見ガン無視で親父らしい。

 

もうこれ以上大きくならないから~というお婆さん、大嘘つきであった。数ヶ月で通りすがりのJKにうわっ!でかい犬!!と言われるほどには大きくなった。


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彼女は山梨の山中にて数ヶ月サバイバルの末、三匹のきょうだいたちと保護されたらしい。なので雑種には違いないのだが、何犬の血が入っているのかは不明だった。たぶんダルメシアンは入ってる。

 

強かな犬だった。  

近所の公園に何故かいた野生のニワトリを追いかけ回して首元を一撃、得意げに持って帰ってきたらしい。(最近知った)

 

川に連れていった時、穴を掘りまくりアシナガバチに顔を刺されパンパンに腫れた。30分で完全回復し何事も無かったかのようにまた穴を掘り始めた。懲りない犬だった。 

 

一週間脱走したこともあった。捜索中、変な柄のデカい犬がキウイ畑でキウイを食ってた!って近所のガキが話してた。やっぱ山育ちはちげえわ。

発見して追いかけ回しても余裕そうに、バカにしたような顔で煽った挙句茂みに消え去った。 

 

彼女はデカい肉をくれる祖母のことが大好きだった。それを利用して脱走犬捕獲作戦用最終兵器として祖母を召喚。捜索に出るや否や、祖母の匂いを嗅ぎつけた彼女ははち切れんばかりにしっぽを振りノコノコ茂みから出てきた。探すまでもなかった。

 

夜に散歩に出たら、自販機にへばりついてたカナブンに喧嘩売って鼻に張り付かれて負けたこともあった。

 



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ビールを水に混ぜると少し酔っ払ったように転げ回ってた。

 

キャンプに行った時はいつも朝露に濡れるであろう草の上で何も気にせずに寝ていた。案の定朝はびちょ濡れ。

 

ユニークな柄で、スリムで立派な犬だった。15年、犬にしては長生きだった。自分の人生の半分以上連れ添った家族だった。

 

晦日、親父に抱かれながら痙攣する彼女を見ていた。同時に初めて親父が泣くのを見た。自分は泣けなかった。ここ数年アパシー気味である自分も彼女の死に際には泣けると思っていた。少し期待していた。自分でも嫌になる。ただただ、楽にしてやりたいと思いながら鼻先を撫でていた。そこを撫でるといつも気持ち良さそうに、眠そうにしていたから。

 

呼吸が止まった。もうマッサージしないからねと言う親父。心臓は動いていた。人工呼吸でもすればまだ生きられたけど延命はやめた。口からだらんと垂れた赤い舌が常温に晒し続けた肉みたいな色になっていった。白黒の毛にあの赤はよく映えていたのに。

 

逝ったときはBGMに紅白のKISSが流れていた。奴らも白黒だが不適にも程がある。

 

毎年元日には親父の実家に行っている。

今回は母と彼女を置いて親父と自分の二人で行き、すぐに帰ってくる予定だった。

きっと家族に迷惑をかけないようにとこのタイミングだったんだと思う。

 

そして彼女の死を準行方不明だった双子の弟に伝えると翌朝には我が家に飛び帰ってきた。SMSすげぇわ。約三年ぶりの再会で、ナスじゃないとは言いきれない髪色になっていた。両親は犬の死の悲しさを数年ぶりの息子との再会の嬉しさで充分に埋められていたように自分には見えた。やはり彼女が引き寄せたのだろう。

  

 

涙こそ出ないがとんでもなく苦しい。

小学生の頃、課題図書の盲導犬クイールの本で号泣してから犬がテーマの作品だけは絶対手をつけないようにしてきた。愛犬を殺されて殺人マシンになったJohn Wichですら観ていてすごく辛かった。そんな自分には受け止めきれない。

 

廊下を通る度に彼女がいた玄関を見てはやたら広く感じて上手く息ができなくなる。

 

まだ部屋に落ちている毛の一本のせいで何も手につかなくなる。

 

何も忘れたくないからこうして書いてるわけだけど、あの手触りも鳴き声も少しずつ忘れていってしまうのだろうか。死別とはこういうものなのか。

 

忘れることも苦しいし、思い出しても苦しい。忘れていたことすら忘れていくだろうし、またそれを思い出してどんどん苦しくなるだろう。

 

犬は絶対に裏切らないけど絶対に先に逝く。もう二度と犬を飼うことはできないと思う。

 

ただただ苦しいだけだけど、今は彼女が天国でお前は地獄だろ!って言われながらニワトリにどつき回されていないことを願う。

ちょっと短くなった尻尾に気づくかな。親父が形見に先っぽだけ切ってたよ。ごめんね。身は切ってないから安心してね。

 



配送員は電気あんまの夢を見るか。

 

爽やかな風に揺れる金色の麦畑。

不自然に路傍に佇む毒々しい彼岸花
遠慮がちに景色に色を添える百日紅

2週間も経つと微かに香り出す金木犀

秋も近いと西日に目を細める22歳無職。

 

 

10/1から正式に無職になった。

が、9/29、最終出勤日の翌日から以前のバイト先の配送会社に戻り、元気に家電を運んでいた。

 

トラックの運ちゃんたちはみんな気さくで出戻りに優しかった。職場内で同年代とコミュニケーションが取れる時点で前職より遥かにマシである。10分くらいキン●マの話をした。

 

聞けば、自分が居なかった半年間で社員の負担軽減&業務の効率化、加えて賃金アップというホワイト化が急速に進んでいた。前職があまりにも黒かったので白く見えるだけかもしれないが。

 

聞けば、見た目が完全にギャングの課長が、元請けの佐●急便にジョルノもビックリのスゴ味を見せつけ、かなりの金額をぶんどり社員に還元しているそうな。前職との強烈なギャップに混乱してタバコを逆さに咥えた。

 

 

さて、我々の依頼主は天下のジャパ●ットである。

こいつがやらかした。

 

9/16、敬老の日

ジャ●ネットは地獄の蓋を開けた。

 


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驚きの10万円引きである。

嘘である。元の値段は19万円くらいだ。

だが爺ちゃん婆ちゃんは想像以上にちょろい。

さらに増税前という見事なコンビネーション。

結果、●川の倉庫がパンクするほどの注文が殺到。

自分の腰が疲労骨折するに至った。

 

神経が挟まっているようで、普通にしてるだけでふくらはぎまで痺れる。マッサージチェア運ぶ奴がマッサージ必要になるという痛烈な皮肉だ。

 

接骨院に行き、問診票に無職と書く時は大和田常務みたいになった。保険が切れていると知った時はレールから外れたと痛感した。そして最悪手術が必要と言われ心も折れるところだった。

 

だが、体を動かし汗をかき、変わる景色の花々を眺め、ラップバトルを観ながらもりもり飯を喰らい、自由に喫煙し、終始くだらん話をし、たまに客から貰えるチップに湧き、運ちゃんから奢られ、夕方には勉強や読書をし、毎晩日付が変わる前に疲れて眠り、翌朝きっちり7時に目が覚める。

 

昼飯も食えず23時半まで虚ろな目で働いていた頃と比べると、こんな生活はすごく正しく健全であると感じる。

 

なんの責任もないしね!