秋はちょうどいい時間に夕焼けが見られて良い季節だと毎年思う。
半袖はやや寒いくらいの朝、外を歩き鼻から空気を吸い込むと、つい先日までの暑さが嘘のような優しい冷たさを感じ、冷たくなったなぁ、秋だなぁと当たり前の感想を抱きながら満足する。
鼻腔の浅い所を擽る金木犀の匂いに気がつくと、この匂いを胸いっぱいに吸い込みたくなる。が、花に近づき意識的に嗅ごうとしても期待していたほど香らない。
意識の外から香るその匂い。
それは意識してしまった途端に逃げられてしまう。求めるものこそ逃げゆくものなのだ。
尾崎放哉の
「木犀に 人を思ひて 徘徊す」
という句を思い出す。
何となくぼんやりと、言わんとすることがわかる気がする。
そうこうしているうちにさっさと散ってゆく金木犀は「また来年ね」と言っているようである。
そういうわけで、金木犀の匂いを嗅ぐといつも勿体ないというか、もどかしいというか、そんな気持ちになる。
去年の今頃の金木犀は雨に散り、ほとんど香る暇がなかったと記憶している。
そして去年の今頃の自分は無職になったと記憶している。
1年は早い。
早すぎて何もできなかった。
いやほんとまじで何もできなかった……
ただただ、配送しながら待ち続けているだけの1年間であった。何も生み出せなかった。
2月から渡英の予定が6月、10月とどんどん延期になり結局キャンセル。 その間に運んだ冷蔵庫の数は約1000個。
自分の希望的観測が招いた結果ではあるが、約9ヶ月の無駄遣いは新卒の無駄遣いよりくるものがある。腰にもくるものがある。
目的があったからそれに縋り、踏ん張れてきた。
目的が無くなれば足元にも心にもぽっかり穴が空き、さすがに凹む。
もう運送業でもいいかもしれない。
休みも給料も他所と比べれば悪いかも知れないが、精神衛生という点で見れば抜群に良い。
トラックの運転は楽しい。
アホな客みてニヤニヤするのも楽しい。
同僚上司先輩には恵まれているし、毎日部活の延長のような生活をしながら金をもらい、快適ではないか。
うん、全然悪くない。職場も近いしもういいや。
なんて言うとでも思ったか!マヌケがァ~~~!
生憎、ここで腐るようなクソザコメンタルはしていないのである。
配送業もいいがこのジョルノ・ジョバァーナには夢があるのだ。
このまま待っていたところで渡英イベントが発生しないことが確定したというのは大きい。
イベントが来るかもしれないと思いながらダラダラ待機していたのがいけなかった。これこそが生産性のない生活の原因だった。
あと50回転回せば多分ペカると思いながらダラダラ打ち続けるジャグラーのようにいけなかった。
とにかく、待つことには飽き飽きした。
モラトリアム延長戦も最高の職場のおかげで1年間満喫した。
今年の残り約3ヶ月間で未来に繋がる能動的な事をしたい。
就職はしねぇよ。絶対にだ。
予定の空きは充分だ……
第3Rといこうじゃねぇか……モラトリアム!!